現パロ
───痛くないか、苦しくないか。
そんな、今まで一度も頷いた試しが無いことを、こいつは決まって言葉にしてくる。ちっぽけな雛でも拾い上げるみてえな手と、よっぽど苦しそうに潜められた眉は、多分余計なことばかり考えて、確かめるまではてこでも動こうとしない。だけど、それをまだるっこしいと思ったことは一度もなかった。
だって、こいつに頭を撫でられるのが好きだ。太い指が髪を梳いてくるのも、首の後ろをなぞられるのも、先っぽを擦られるのも好きだ。こいつの舌と息がおれのとぐちゃぐちゃに混ざった時の体温も、あちこちに触れてくる柔らかさも好きだ。
「とにかく、おまえが中に入ってきたら、すげえ気持ちいいからよ」
もちろん、前でも後ろでも構わないし、繋がったまましばらく抱きしめられるのも良い。名前を繰り返し呼ばれるのもいい。気持ちいいから。とにかく全部が全部、いっぱいになって気持ちが良いから。
「お、あとそれから……」
「わ、わかった……、わかったから……」
まだ全部言い終えてもいないのに遮ってきたこいつは、例によってトマトみてえな顔をして黙りこくる。
なんだよ、おまえが聞くから言ったってのになー。
そうちょっとばかしふてくされてみせると、伸びた腕がおれを抱きしめて、「私も好きだ」と小さく呟いたから、こいつの身体のあったかさが、もっともっと欲しくなってしまった。
「真昼の夢」再販分も含め、完売しました…!
私の中の睡蛮全部を詰めこんだといっても過言ではない、思い入れのあるものなので、こうして誰かの手に取って頂けることになり、とても幸福な本でした。改めて、ありがとうございました。
何がってよぉ、人を喰うんだ、そいつは。
それはもう、この世のものとは思えぬおっそろしい形相で、両の眼をかっぴらいてな。
お前さんみたいなのは、その爪で簡単に引き裂かれちまうのさ。
だから、こんな暮れに山奥へいっちゃならんのよ。
な、わかったか?
……そんなことを、どうして今思い出すのだろう。
伸びた影の先で、彼は森の深くに視線を遣っている。何か潜んでいるのかと茂みに目を凝らしても、薄闇に吸い込まれるばかりで判然としなかった。
「──蛮骨」
遅くなってすまない、とその背に呼びかけると、彼は肩越しにこちらを振り返る。
瞳の中で、沈みかけの夕日がじわりと滲んで見えた。
それから何事もなかったように立ち上がって歩き出す三つ編みを、睡骨は追う。黒ずんだままの指先を、握りしめた。これはどれだけ洗い流しても消えない。消せない。夜が覆い隠すまでは。
『だから、こんな暮れに山奥へいっちゃならんのよ』
ここにも、鬼が二人いるのだ。
MONSTER、結局一週間で完走してしまってびっくりしたんですが面白い作品でした〜!!
最終的にテンマ先生の夢女子になりました(??)
木内さんの落ち着いた成人男性の演技がとってもよかったし、物語の起点である「この手で必死に命を繋ぎ止め生きろと願った子どもは、なんの躊躇もなく人を殺す人間だった」という設定が最高でした 睡蛮かな…(幻覚)