目を凝らした先に骨は無かった。そのことに安堵する。
滲んだ汗を拭うと、湿り気を帯びたにおいが一層濃くなった。爪の中まで詰まった土。石粒。這い出る虫。そんなものが混じりあう感覚にも、とうに慣れてしまったらしい。
───このまま、共に埋もれてしまえば良いのだろうか。
暗い底を眺めた束の間、そんなことを思い浮かべた頭を振り払って、睡骨は立ち上がった。物言わぬ男をなんとか引き摺り、穴の奥へそっと横たえる。そうしてから、傍らに積み上げた土を覆い被せ、元の場所へと還していく。
掘って、掘って、埋める。言うなればそれだけに過ぎぬ作業を、今日だけで幾度繰り返したものか。考える余地すら己に与えまいと、睡骨は動き続けていた。それでも肉体の限界が近いのか、土で汚れた視界が霞む。日も落ちようとしていた。だがせめてあと少し。もう一人だけでもと、腕を伸ばす。
眠るための場所は、浅すぎてはいけないのだ。大雨が降れば流れてしまうし、獣や妖が掘り起こしてしまうかもしれない。読経の一つもしてはやれないが、せめて、このくらい。
罪滅ぼしなどと言うつもりは毛頭なかった。ただ、彼のように───野晒しの亡骸を平然と眺めることは、あまりに難しかった。
※現パロ睡蛮♀






戸惑いながら触れた先で、睡骨の手のひらは静かに受け止められた。小さく丸みを帯びた胸は、確かにいつもと随分違っている。
もちろん、目にするのはこれが初めてではない。散々頭の中でも言い聞かせてきたことなのに、自分は何も分かっていなかったのだろうか。目の前の恋人が身体的には紛れもなく女性なのだということを、今になって強く思い知らされるようだった。
「どうだ?」
「ど、………」
そんな複雑な感情などさておきという風に、肩越しにこちらを見上げようとする眼差しには純粋な好奇が宿っている。睡骨は視線を彷徨わせながら、おずおずと口を開いた。
「……嫌じゃ、ないか?」
口にこそ出さないが、元の身体に戻れずにいることを一番不安に思っているのは彼の筈だ。だからこうして行為を許しているのも、本当はどこか無理をしているのではないか。そう考えてから、睡骨は自身の迂闊さに眉を曇らせる。こんな形で問いかけたところで、拒否などできる訳がないだろうに。
すると、不意に伸ばされた腕が、睡骨の首を引き寄せた。
「……っ」
息を混じり合わせるキス。最初は少しばかり強引だった舌先は、次にはやんわりと睡骨を誘い出して、甘えるように絡められる。目を閉じると、小さな水音だけが耳に響いた。繰り返すうちに、体中がたまらない何かで満たされていくのを感じる。腕の中の温もりを強く抱きしめた。いつもと何も変わらない。言葉が無くとも、それが答えだった。
睡骨は再び膨らみを包み込むと、ゆっくりと、ゆっくりと指で押し上げる。その実にぎこちない仕草に彼が笑った気がしたが、それでもこちらのペースに委ねてくれているのは幸いだった。正直なところ、あまり余裕がないのである。緩やかに突起を擦ると、蛮骨は僅かに息を漏らして、くすぐったそうに身を揺らす。恋人をシーツの上に横たわらせた睡骨は、ささやかな乳房に唇を寄せた。
メッセージ下さった方へ

ペンギンの親子、そうじゃないですか?と思い始めるとそう見えて仕方なくて魔が差しました……ありがとうございます😌
睡骨先生の肩とか銅のちょっとぬぼーっとしたシルエットが好きなのでそんなイメージで。
文鳥大兄貴もかわいいし、赤ちゃん大兄貴(赤ちゃん大兄貴?)もかわいいし、大兄貴はなぜだかちっちゃい鳥と親和性があるんだなという日々の発見ですね……(幻覚)
睡骨はネコチャン
メッセージくださった方へ

早速pixiv見てくださってありがとうございます!
そして失楽園(というコメントを付けてしまった落書き)を好きと言ってくださってありがとうございます。統合睡骨と大兄貴の関係を考えたときに浮かんだイメージでした。統合睡骨は痛みに鈍感そうだなと思っています。

おれはおれだと、もう大丈夫だと口にしたけれど、知恵の実を食べた人間が楽園を追放されたように、睡骨は生前の大兄貴との関係には二度と戻れないのです。みたいな(幻覚)
大兄貴は大兄貴で死骸なので、もう以前の熱は無いし、お互い血は流れるけど乾ききった交わりしかできないみたいな、そんな睡蛮も好きです(幻覚)
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